ここ数年でスモールビジネスを開業する人が右肩上がりに増えているようです。
総務省の調査によると、2000年代に入ってから多少の浮き沈みはあるものの、総じて開業率は増え続けており、今も沢山のスモールビジネスが新しく誕生しています。

しかし同時に廃業率も常に高水準のまま推移しているのも現実であり、ほとんどの年において軒並み開業率と同水準か、それを上回るほどたくさんのビジネスが廃業に追い込まれてしまっているのです。

これからスモールビジネスの開業を考えている人は、この現実をしっかりと受け止めて、慎重にビジネスを運営していかなければならないでしょう。
そこで今回は、特に少ない資本でビジネスを始めようとしているスモールビジネスの起業にあたって、最低限覚えておいて欲しいことを紹介します。

 

すべての起業家が知っておくべき事実

起業熱に浮かされて・・・?

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冒頭でも述べたとおり、近年はネット環境などを利用してスモールビジネスを開業する人が増え続けています。かつてはIT起業熱により沢山の起業家が誕生していましたが、今でも、特に小資本で小さくビジネスを始める人は増え続けているのです。

しかし年間何千人、何万人もの人がビジネスを立ち上げる一方で、それらのビジネスの多くは起業後数年間で廃業してしまっているのが実態です。
たとえば米国では創業1年目に約40%のビジネスが廃業に追い込まれ、5年間の間では8割以上のビジネスが姿を消しているといわれています。

それほど、長期的に利益をもたらすビジネスを構築するというのは難しいものなのです。これからスモールビジネスを立ち上げようと考えている人は、まずはこの現実を直視しなければなりません。

しかし、決して起業はリスクが高いからやめるべきであるといっているわけではありません。考えていただきたいのは、これほど多くのビジネスが数年間で廃業に追い込まれているのはなぜなのかということについてです。

巷には、昔からスモールビジネスで成功するための書籍やノウハウを伝授する講座などが沢山あります。しかし、世の中で立ち上げられるビジネスの大半が、創業後数年で駄目になってしまっているのでしょうか?

あなたがスモールビジネスの立ち上げを考えているならば、この質問を冷静に受け止め、あなた自身のビジネスの運営に活かさなければならないのです。

 

多くの起業家が努力しているが・・・

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ほとんどのビジネスが数年で廃業に追い込まれてしまっている現実について述べましたが、これは必ずしも創業者が怠慢だったからではありません。

実際、スモールビジネスの経営者の多くは日々努力を怠らず、休日も返上して熱心に仕事をしています。しかし一生懸命頑張っているにもかかわらず、ビジネスの業績が低下し、十分なキャッシュを確保することができずに苦しんでいるのも現状なのです。

これはどうしてでしょうか?

それは多くの場合、決して経営者の努力不足などではなく、その「方向」が間違っているからです。そして多くの起業家たちは、長期的なビジネスを運営するために必要なことを放置して、目の前の作業に埋没してしまったり、ビジネスのそれぞれの成長段階において正しい「変化」をビジネスに起こすことが忘れてしまいます。

その結果、そのままビジネス自体を駄目にしてしまうのです。これは起業家自信の考え方や姿勢に対する間違いが原因であり、

そういった間違いには、大きく分けて起業家個人に関するものとビジネス全体に関するものがあり、これらの間違いや勘違いによって、沢山のビジネスが撤退や廃業の憂き目に遭ってしまっているのです。

 

「仕事」ではなく「ビジネス」をする

「職人気質」「技術者気質」の起業家が苦労するワケ

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特に起業家個人のビジネスに対する考え方が、事業そのものの成否や起業家自身の人生に多大な影響を与えることになります。

たとえば、全米でベストセラーとなったマイケル・E・ガーバーの『The E-Myth Revisited: Why Most Small Businesses Don’t Work and What to Do About It(邦題:はじめの一歩を踏み出そう,世界文化社,2003 )』には、このことを端的に表している記述があります。

それは

『(起業熱にうなされる人々がもっている致命的な仮定は)事業の中心となる専門的な能力があれば、事業を経営する能力は十分に備わっている』(前掲書、28頁)

と考えているということです。

特に「職人気質」な起業家のなかには、自らの専門的な能力に自信をもつあまりに、よい商品を生み出す力さえあればビジネスが上手くいくと考えている人が沢山います。
当然、そういった高い技術によって質の高い商品・サービスを生み出すことは素晴らしいことです。

しかし、起業家自身が「優秀な職人」であるからといって「優秀な経営者」とは限らないのです。ビジネスの一部として専門的な仕事をこなすことと、事業そのものを運営していくことは別の問題です。あなたはビジネスを長期的に運営するスキルを身に着けなくてはならないのです。

しかし多くのスモールビジネスを立ち上げようと考えている起業家が、この勘違いをしたままビジネスを失敗してしまっているのが現状です。

 

起業家に必要なのはビジネスを構築し、運営するスキル

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事実、起業してみるとこれまで経験したことのない作業に追われることになります。創業初期段階では経理作業やスタッフのマネジメントなど、これまで「会社員」や「職人」あるいは「技術者」として経験がなかったような仕事が次々に出てくるのです。

そしてたいていの起業家は、ビジネスを始める前は考えもしなかったような作業に追われ、一番重要な本業に手が回らないといった事態に悩まされることになります。
さらに創業期のビジネスには混乱がつきものです。創業者自身が自覚していないところでも、日々なんらかの問題が生じるものなのです。

そういったイレギュラーな事態にも必死で対処しながら、沢山の職人気質の起業家はこう思うでしょう。
「こんなはずじゃなかった・・・」と。

彼らは自らのスモールビジネスで自由を得るどころか、そのビジネス自体に苦しめられることになるわけです。

 

ビジネスパーソンではなく「経営者」になる覚悟をもつ

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ここでそういった起業家の「勘違い」を象徴する統計を紹介します。

それはアメリカの調査会社が報告したもので、駄目になってしまったビジネスの9割以上が、創業者の知識とスキルが不足していたために破綻に追い込まれてしまったというものです。つまり、圧倒的多数のビジネスが創業者の慢心や勘違いによって潰れてしまっているのです。

長期的なビジネスの運営にはスキルと重要な勘所(カンドコロ)に対する理解が必要なのです。そしてそれは、起業家が職人や技術者として培ってきたスキルではなく、しっかりと利益の上がるビジネス構築し、それを長期的に運営するためのスキルなのです。

多くの起業志望者が、自分のビジネスの運用について一段高い視点からじっくりと考えてみるということを怠っています。
自分がどういうビジネスをしているのか、成功するにはどういう戦略を立てなければならないのか、自分が理解していないことは何か・・・といったことを考えていないわけです。

本来は、こういった「経営者視点」でビジネスを捉えなければなりません。
これは当たり前のことのように聞こえますが、多くの職人気質・技術者気質の起業家はこの点を見落としたまま、これまでの仕事の延長線上でビジネスを始めてしまうのです。

しかし起業してビジネスを運営していく以上、あなたはビジネスパーソンではなく「経営者」になる覚悟が必要なのです。

 

ビジネスには「段階」がある

ビジネスの成長段階と直面する課題

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次にビジネス全体に関する問題です。

多くの起業本と呼ばれる書籍ではビジネスの成長段階として、創業段階、成長初期段階、成長後期段階、成熟段階という4段階に分けているものが多いです。
それぞれの呼称に差異はあれど、大まかにビジネスはこれらの段階を経て大きくなっていくというわけです。

そして、これらの段階ごとにビジネスが直面する課題は違ってきます。
たとえば創業段階ではビジネス自体が確立されきっていないことによる混乱があり、成長初期段階では運営の体制が未整備なことによる繁忙、そして成長後期段階では人材不足などのマンパワーに関する課題、成熟期にはビジネスそのものの衰退・・・といった感じです。

 

それぞれの段階では、各々に適したビジネス形態やマネジメントの仕方というものがあり、起業家はこれらの段階に応じた適切な組織運営をしていかなければなりません。

たとえば創業段階では全てを一人でやっているか、あるいは数人の共同創業者がいるくらいだったりします。第二段階に入っても、多少業務プロセスが確立されている程度で、その形態にあまり変化がないことがほとんどでしょう。

しかし第三段階、第四段階と進むにつれ、業務プロセスが複雑になり、分業を行わなければビジネスが回せなくなってきます。専門部署も創設しなければならないでしょう。

このように、ビジネスの規模が大きくなるにつれて、起業家はその役割を徐々に変化させていかなければなりません。
具体的にどういう変化をもたらすべきかはビジネスの種類によって変わってくるでしょうが、いずれにしても起業家自身がビジネスの規模によって変わらなければならなくなるのです。

 

リーダーシップが求められるとき

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あなたのビジネスが成長するにつれ、あなたは最適な資金調達方法がわからなくなったり、創業当初に雇ったスタッフが右肩上がりに増え続ける仕事についていけなくなってくるでしょう。おそらく対症療法的に次々に対策を打っていったところで、どんどんコントロール不能な状態になっていくことでしょう。

ビジネスがそのような状態になったときには、いよいよあなた自身の役割を変えるときが訪れたということです。経営者としてあなたはリーダーシップを発揮して、組織の改革に努めなければなりません。

特に前項で述べたような「職人気質」な起業家は、あなたの好きな実務をこなすことから、他のスタッフを管理し、叱咤することに力を入れなければならなくなるはずです。
そして組織内に効果的なチームワークをつくりあげ、作業プロセスを規模に応じた形にシフトしなければならないでしょう。

このような大局的な取り組みと、忙しい日常業務の間のバランスをとることが、あなたには要求されるのです。ですから、今のうちからそういう状況でも経営者としての視点を見失わないように、ある程度のロードマップを考えておく必要があるでしょう。

 

まとめ

これまで「仕事」ではなく「ビジネス」をしなければならないということで、特に職人的な起業家が陥りがちな失敗について警鐘を鳴らしてきました。
現代では、どんな人でも手軽にビジネスを始められるようになってきていますが、それだけに、事前にしっかりとビジネスを「設計」することが重要になってきているのです。

無論、はじめに設計した通りにビジネスが進むことは皆無といっていいでしょう。途中で数え切れないほどの軌道修正をする必要が出てくるのは、どんなビジネスでも同じです。
しかし、設計図のない建物を建てることができないように、ビジネスにも起業家が目指すべき理想のカタチが必要となります。

はじめにある程度の理想とするビジネスの設計図を書いておくことは、事業の運営でたびたび起こるイレギュラーの対処の際に道を示してくれる羅針盤の役割を果たしてくれますし、周囲に起業家の考え方を示す意味でも重要です。

あなたがもしこれからスモールビジネスを始めようと考えているならば、本記事で述べたことを念頭におきつつ、まずはあなた自身のビジネスの設計図をなるべく詳細に書くことをお勧めします。それが「転ばぬ先の杖」となるのです。

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