あなたは「フリーランス」というと、どういう印象を抱くでしょうか?
近年は「自分の力を試したい」とか「独立して自由な生活を送りたい」と考えてフリーランスになる人が増えているといわれます。
もしかすると、あなたもその一人かもしれませんね。
社会的にもインターネットが定着することによって、こういった生き方が広く認知されるようになってきているのは事実のようです。そういう意味ではフリーランスにとって働きやすい社会になってきたともいえますが、果たして実態はどうなのでしょうか?
そこで今回は、フリーランスになるための条件や手続き、そして多くのフリーランサー達の実態について紹介したいと思います。
フリーランスとは?
個人でビジネスをしている人は基本的にフリーランス
「フリーランス」というと、どこか定義が曖昧で、わかりにくという印象をもつ人もいるかもしれませんが、基本的に企業に属さずに個人で仕事を請けている人は皆フリーランサーということになります。
たとえばフリーランスのライターやWEBデザイナーなどがそうです。有名なところではフリーアナウンサーやフリーランスの声優なんて人達もいますが、人によっては企業に属して活動をしている人もいるので、そういった場合は「フリー」と呼称していても、実態はサラリーマンということなります。
言い方はともかくとして、とにかく組織に属してそこから給与という形態で収入を得ておらず、あくまでも自分個人でクライアントから直接収入を得ている人は、皆フリーランスというわけです。昔ながらの言い方でいれば「個人事業主」ということになり、人によっては両者を厳密に定義づけて区別する人もいるようですが、実態は同じと考えて差し支えないでしょう。
たとえば企業に属さずに現場ごとに仕事を請け負っている照明技術者や、プロジェクトごとに様々な企業に入って仕事をするフリープログラマーなども、カテゴリーでいれば個人事業主ということになります。
さらに珍しいところでいえば、将棋の「プロ棋士」の人達も実態は個人事業主という立場です。彼らは将棋連盟に所属はしているものの、あくまでもフリーランスの身分として様々な棋戦で戦っているというわけです。
このように、非常に多くの職業分野でフリーランサーが活躍しているわけですが、実際にフリーランスとして活動していくにあたって、何か特別な届出や資格は必要となるのでしょうか?
会社に属さず仕事をしていればフリーランス
結論から言えば、そういうものは「一切必要ありません」。
なぜならば、フリーランサーは有り体に言えば「個人で商売をする人」ですから、株式会社などの法人のように設立手続きを経て承認を得る必要もありませんし、年齢制限なども原則存在するわけでもありません。
わが国の民法やその特別法である商法にも、商売の「やり方」や「プロセス」について細かく規定した条文が存在する場合がありますが、商売をする「資格」そのものについての規定が存在するわけではないのです。
ただし、当然ながら未成年者やいわゆる制限行為能力者に関しては、その商業活動に実質的な制限がかかる場合がありますし、司法書士や税理士のような国家資格のように、個人で仕事をするうえでも前提となる資格がなければ開業できない職業もあります。
ですが世の中に存在するほとんどの職業・ビジネスには本来資格はいらないのです。あなたが友人の手伝いをして回ってお金を稼ぐのに、特別な資格などはいらないことからもわかると思います。
それに必ず一人でビジネスをしなければならないというわけでもなく、誰か手伝ってくれる人を一時的・長期的に雇って協力してお金を稼いでも構いません。
たとえば、建設業の世界には一時的に雇った部下たちと建設プロジェクトを請け負う親方もいますし、ほとんど企業と同じような規模の組織を抱えていても、法人登記をせずにあくまでも個人事業としてビジネスをしている人も大勢いるのです。
本来、法に抵触しない限りは、どういう形態でビジネスをするかは個人の自由なわけですから、やろうと思えば誰でも簡単にビジネスを始めることができますし、フリーランサーになることができるのです。
「開業届け」は出す?出さない?
開業届は義務ではない
前項で述べたように、フリーランサーとして営業活動をするにあたっては、原則としてやらなければならない手続きや届出などは必要ありません。
ですが、営業活動をしていく上で「開業手続き」をしておくと様々なメリットが受けられます。
「開業手続き」あるいは「開業届(とどけ)」は、フリーランスとして新しいビジネスを開始する際に、税務署に提出するものです。そういった手続きは全て役所で一括して手続きできると思い込んでいる人もいますが、確定申告などの税金に関する手続きでもあるので、原則として開業届は税務署に提出することになっています。
期限はビジネスを開始する1ヶ月前という体裁にはなっていますが、実際には開業届を提出しないままビジネスをしている人もいます。事実上、未提出による罰則などが存在しないからです。むしろ提出することによって、本当にごく稀にではありますが、税務署員がビジネスの状況を確認しに来ることもありますので、それが煩わしいと考える人もいるようです。
しかしそれを差し引いても、開業届は提出しておくことをお勧めします。たとえ提出期限を過ぎてしまっていたとしても構いません。なぜならば、開業届はフリーランサーにとっては義務ではありませんが、提出することによってメリットが享受できるからです。
あなたがもしフリーランスとして仕事をしており、まだ税務署に開業届を出していないのなら、なるべく早めに提出することをお勧めします。
開業届のメリット
では、ズバリ開業届を提出するメリットとは何でしょうか?
これは多くの人が知っていると思います。開業届によって「青色申告」が受けられるようになるのです。「青色申告」という呼称だけは聞いたことがあるという人もいるかもしれません。
ご存知の方も多いと思いますが、「青色申告」は通常の確定申告である「白色申告」に比べてビジネスからの所得の控除額が大きいので、ほとんどの場合、白色申告よりも納税する税金の額が少なくて済むようになります。有り体に言えば「税金対策」として有効なわけです。
また、もし残念ながらビジネスからの収益が「赤字」になってしまった場合、それを次年度の決算に繰り越せるようになります。
つまり、仮に昨年度の収益が赤字で今年は大幅な黒字を計上できたという場合に、昨年度の赤字分を今年度の黒字から控除して納税額を算出することができるようになるわけです。
また、次項で述べる「屋号」で銀行口座の開設もできるようになったりしますので、社会的信用を得るといった側面からも有効な手続きであるといえるのです。
もしかすると「税務署での手続きが面倒そうだ」と思われているフリーランサーの人もいらっしゃるかもしれませんが、手続き自体は全く難しいものではありません。
税務署に行って専用の提出用紙を受け取り、必要事項に記入するだけです。当然、身分証などの各種証明書も必要になるわけですが、その辺りは役所での諸々の手続きと大差はありません。また国税庁のHPからも書式がダウンロードできますので、そちらを利用して、あなたの納税地を所轄する税務署に郵送してもかまいません。
強いて言えば、そういった手間がデメリットということになりますが、それ以外には取り立ててフリーランサーに不利になるようなことはないのです。
開業届を出そうが出すまいが、税務署や役所からはしっかりと確定申告に関するチェックをされますし、フリーランスとして仕事をしていれば、いずれにせよ失業手当などは受けられませんので、そういった意味でも税制上のメリットを得るために開業届は出しておくべきだと思います。
「屋号」について
「屋号」とは、フリーランサーとして活動していくうえで、あなたの「お店の名前」に該当するものです。これは実際にモノを売る商売ではないビジネスの人には馴染みが薄いかもしれませんが、要は近所の八百屋さんなどの「○○商店」「××青果店」といった名前が屋号にあたります。お店の看板に書いてある名前をイメージするとよいでしょう。
屋号は必ず付けなければならないというものではありません。
開業届の氏名・生年月日・職業などの記入枠内に屋号記入欄もありますが、ここを白紙のまま提出しても、税務署から咎められることはないのです。
それでもあなたがフリーランスとしてビジネスをするうえで、商売の「顔」となる屋号を決めておいたほうが、取引先から覚えてもらえやすくなりますし、ビジネス上の信用も高まると思います。
また既に述べたように、開業届などの手続きをしっかりしておけば、屋号での銀行口座をつくることができるようになるので、ビジネス上の資金管理もやりやすくなります。
とかく個人事業ではビジネスからの利益が直接的に個人の収入となるので、個人的な資金とビジネス上の資金の境界が曖昧になってしまいがちです。
しかしこれらは明確に分けるべきであり、確定申告などの利便性を考えても、その辺りはしっかりとした線引きをしておくべきでしょう。
屋号によって「自分でビジネスをしているんだ」という自覚も高まると思います。
あなたが現在個人名で仕事を請け負っているフリーランサーならば、屋号についても検討してみてはいかがでしょうか?
「仕事」ではなく「ビジネス」という感覚を持とう
多くのフリーランサーが陥ってしまう落とし穴
近年はすっかりインターネット環境が整備され、自宅でネット環境を使って仕事をするフリーランサーが増えてきました。それだけ個人でビジネスをするための敷居が下がってきたともいえるでしょう。
事実、これまで述べてきたようにフリーランサーになるために必要となる手続きはほとんどなく、むしろ税制上のメリットを得られるものがほとんどです。誰もが自分でビジネスをやりたいと思えば、独立自体は簡単にできてしまうわけです。
自分の好きなやり方で、好きなビジネスをして生計を立てる・・・。そういったライフスタイルに憧れて独立したフリーランサーも多いのではないでしょうか?
実際、仕事をする時間や休む時間は、ほとんど自分で決めることができますし、企業人のように社内で嫌な人間関係に耐え続けなければならない・・・ということもないでしょう。
しかしそういった自由な印象とは裏腹に、フリーランサーとしての生き方には、実際にやってみなければなかなかわからない「落とし穴」も存在するのです。
これからフリーランスとして独立を考えている人には、そういったネガティブな部分もしっかり理解しておかなければなりません。
ひたすら仕事に追われるフリーランサー
実は、多くのフリーランサー達がそういった理想の生活とは裏腹に、日々仕事に追われ続けているのです。
なかには独立前に思い描いた生活を実現できている人もいますが、大半のフリーランサーは、生活のために常に仕事をしなければならない状況に追い込まれているともいえるのです。
特にネット事業に従事しているフリーランスのなかには、自宅でも出先でも、場合によっては旅行に行ってもパソコンを抱えて仕事をしている・・・なんていう人も実際にいます。
独立前は、仕事をする場所や時間に囚われずに理想の生活が送れると信じていた人でも、実際にフリーランスとして仕事をしてみて、そんな生活は幻想だったと感じている人もたくさんいるのです。事実、多くのフリーランサー達が「いつも仕事に追われている」のが現実です。
それでは、こういった状況になってしまう原因は何でしょうか?
仕事ではなく「ビジネス」
結論からいえば、こういった状況の主因は、多くのフリーランサーが「ビジネス」ではなく「仕事」として日々活動をしてしまっていることが原因であるとえます。より具体的にいえば「自分が常にいなければビジネスが運営できない」という状態になっているからです。
多くのフリーランサー達が、独立前は企業で仕事をしていた人だといわれています。そういった人々は企業人としての「仕事」の延長線上でフリーランスとしての活動もしてしまっているのです。つまり、彼らはより沢山の「仕事」をすれば、思い描いた生活が実現する筈だと考えてしまっているのです。
しかし残念ながら、それは間違いです。
確かに、あなた自身が働けば働くほど収入は上がりやすいわけですが、逆に言えば常に働き続けていなければ収入が止まってしまうということです。
あなたが病気にかかってしまえば、誰もあなたの変わりに仕事をしてくれる人はいないのです。もしあなたがそういった状況にあるフリーランサーならば、仕事ではなく「ビジネス」をしているのだという自覚をもつ必要があります。
ビジネスは「設計」するもの
この辺りは少々専門的になってしまいますので、詳しくは別記事に譲りますが、重要なのはあなたのビジネスをしっかりと「設計」するという視点をもつことです。
フリーランサーにとって重要なのは、継続的にお客さんを呼び込んで売り上げを上げることです。まずは自分の扱う商品やサービスを継続的に売るためのビジネスシステムをしっかりと設計する必要があるのです。
そのためには他人の力を活かすことも考えなければなりません。ビジネスの構成要素の一部を外注するのはその代表例といえるでしょう。
口で言うのは簡単ですが、意外にも多くのフリーランサーが仕事の全てを丸抱えしている状態で、うまく外部資源を利用できていないのです。そのため何でも一人でこなさなければならず、常に仕事に追われている状態になっているのです。
まずは自分のビジネスプロセス全体を見直してみて、他人に任せた方がよいところはないか探してみましょう。それこそが、日々仕事に追われるフリーランサーにとって自由への一歩となるといっても過言ではありません。
まとめ
これまでフリーランスになるための方法や手続きについて述べてきました。
原則としてフリーランスには誰でもなることができます。特別な資格などはいらないのです。
しかし、自分でビジネスをするということは、それに付随する全ての責任を自分自身でとらなければならないということです。
単純に「楽そうだから」とか「組織の面倒ごとが嫌いだから」といった理由で、安易に独立を選んでしまうと、あとで大変な目に遭うこともあるのです。
まずは、あなた自身が本当にフリーランスとして仕事をしていけるのか冷静に考えてみましょう。そして、いざ独立すると決意したならば、自分で「ビジネス」をしていくという決意をしてください。
確かにあらゆる面で困難が伴いますが、それでも全てを自己責任でこなしていくという意志のある人にとって、フリーランスという生き方は非常に魅力あるものといえるでしょう。
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