書店に行くと「集中力をつける本」や「すぐに集中する方法」といった「集中力」の向上に関する本が数え切れないほどあることは、皆さんもご存知でしょう。巷にはそういったセミナーなども沢山あります。それだけ注目されているトピックであるといえるかもしれません。
特に常に上を目指しているエリート思考の人や、独立して会社を経営したいと考えている人は自らのパフォーマンス向上のために高い集中力を維持したいと考えているでしょうし、企業に勤めている人のなかにも「もっと集中力が維持できれば・・・」と悩んでいる人も多いと思います。
そこで今回は、あなたが集中力の高まる時間帯を発見し、それを生かす方法や、そのための「前提」となる考え方を紹介します。
特にこの「前提」となる考え方は非常に重要ですので、書籍などで集中力維持のテクニックを学んだことのある人も、ぜひお読みください。
多くの人は時間を無駄にしている!?~重要な前提~
あなたにとって「価値ある仕事」とは?
かつてピーター・ドラッカーは「自分にとって最も価値のある仕事に、中断されることのない一定時間を充てろ」という主旨の発言をしていますが、これは戦略的に時間管理をするうえで最も重要な考え方であり、人間が継続的に集中力を発揮するためにも必要なことであるといえます。
まずは自分自身に問うてみてください。
あなたにとって「価値」のある仕事とは何でしょうか?
あなたにとって無駄な作業ばかりに時間をとられていませんか?
これらの答えが曖昧なまま作業をしてしまうと、終わりのない迷路に入り込んだように頭の中が混乱してしまいます。脳は目的が不明瞭なまま動かし続けると、それを「苦痛」と認識してしまい、集中力を維持することが非常に難しくなるのです。
どんなに最新のテクニックを使って集中を継続しようと努力したとしても、頭の中が混乱したまま作業をしている限り、脳が集中することを「拒否」するようになってしまいます。その結果、すぐに目の前の作業が嫌になってしまい、全体の時間管理にも支障が出てしまうことになるのです。
目的を明確にしよう
しかし、多くの人は「目の前にある作業の目的」が曖昧なまま仕事をしているといわれています。その作業が自分にとってどれほどの価値があるのかが分からないまま、何とか集中力を発揮しようと躍起になっているのです。
そのため脳が継続的な集中を拒否してしまうようになり、結果として思うように仕事が進まずに悩むことになってしまいます。これは明らかに時間の無駄といえるでしょう。
そのような事態を避けるために重要なのは、どんな作業をするにしても「目的を明確化」することです。
「何のためにこの作業をしているのか?」「この作業のゴールはどこなのか?」
あなたがまず考えなければならないのは、目の前の仕事があなたにとって少しの成果しかもたらさないものなのか、あるいは長期的にみて自分の目的に寄与するものであるのかをはっきりさせ、価値のある仕事を優先させることです。
それ以外の優先度の低い作業は、なるべく他の人にやってもらうか、後でそういった瑣末な作業をする時間を別枠でとるようにします。これは多くのビジネス書で述べられている時間管理の極意ともいえます。
最も集中できる時間帯に最も重要な仕事をこなす
つまり、あなたが最も集中力を発揮できる時間帯には、あなたにとって最も価値のある仕事をしなくてはならないということです。
この考え方を前提として、あなたが最も集中できる時間帯を探し出し、戦略的に集中力を維持する方法を模索することが重要なのです。多くの人は仕事の優先度が曖昧なまま、折角の集中力をどうでもいいような作業に使ってしまっているのが実態です。
「集中力をつける」というと、とかく小手先のテクニックに走ってしまいがちなのですが、大切なのは、自分にとっての作業の価値をはっきりさせることで脳をクリアにしておくことであるといえます。
あらゆる集中力に関するノウハウは、これを前提にしなければ十分に効果を発揮できません。ですから書籍などで具体的なテクニックを勉強したことのある人でも、この前提だけは忘れないでください。脳に「迷い」を与えてはいけないのです。
あなたの「集中力」が最大化する時間帯を知ろう
集中力が最大化する時間帯は人によって違う
ほとんどの人にとって、最も集中力を発揮できる時間帯は午前中の比較的早めの時間帯であるといわれています。しかし実際には、夜の時間帯の方が集中力を発揮できるという人もいます。
ですから、実際に最も集中力を発揮できる時間帯をあなた自身が知っておく必要があります。
まずは過去を振り返って、あなたが最も周囲の雑音や雑念に囚われず効率的に作業ができた時間帯はいつなのかを思い出してみましょう。つまり、あなたが「集中しよう」と意識しなくても「勝手に集中していた」時間帯について思い出すのです。
誰でも一度は気が付いたら集中して作業ができていた記憶があるはずです。四六時中雑念に囚われている人はいないからです。
自分なりに調査してみる
それでも集中しやすい時間帯がわからないという人は、実際に自分で調べてみましょう。
具体的には60分から90分を1サイクルとして、最も作業効率がよかった時間帯を調査するのです。午前中に2~3サイクル、午後に3~4サイクルといったふうに決まったタスクを割り当てて、それぞれのパフォーマンスの違いを調べます。
ポイントとしては、「適度な休憩をとること」と「マルチタスク」はしないということです。
1サイクルごとに必ず休憩をとるようにしてください。継続しての作業は集中力とともに、あなたの意志の力までも浪費してしまうことになるのでNGです。
通常は10分程度ですが、2~3サイクル終わる毎に30分程度の完全なリフレッシュタイムを設けるようにします。食事などもこの時間帯に充てるようにします。
マルチタスクはしてはいけない
そして何より気をつけなくてはならないのは、あなたは決して「マルチタスク」をしてはいけないということです。
マルチタスクは生産性が著しく落ちる原因となります。これは統計学的にも実証されていることであり、一度ある作業から離れてしまうと、戻ってきたときに同じ程度の集中力を発揮できるになるまで数十分かかってしまうという結果も出ています。
これだけでも、いかにマルチタスクが集中力の維持にとって害となるかおわかり頂けると思います。パフォーマンスの高い仕事をするためには、一つの作業にじっくりと集中し続けなくてはならないのです。
どうしてもマルチタスクが必要となる場面では、そのための特別な時間を設定することをおススメします。あなたにとって重要な仕事には、脇目もふらずに集中しなくてはならないのです。
集中力を維持するための計画を立てよう
タスク計画策定のススメ
これまで述べてきたように、あなたが「朝型」にせよ「夜型」であるにせよ最も集中力の発揮できる時間帯に最も価値のある仕事を割り振るようにしてください。
そして1日の初めに「タスク計画」を立てることもおススメです。
繰り返しになりますが、ほとんどの人は自分自身に最高のリターンをもたらす行動が何なのかを明確にしていません。その「僅かな」行動が、全体のパフォーマンスに著しい差をもたらすにも拘(かかわ)らずです。
そういった重要な行動を明らかにして、それに効率的にあなたの集中力を配分していかなくてはなりません。そのために1日のスタートとしてタスク計画を立てるのです。
実際、成功しているビジネスマンや経営者のなかには、朝起きてはじめにすることが、その日の最も効率的な仕事のやりかたを決めることだという人も多いです。
そうやって頭の中を整理することによって、脳を自分の目的に寄与するように働かせることができます。重要な仕事に集中するための下地が出来上がるのです。
「邪魔」が入らないようにあらかじめ計画する
他人からの「邪魔」や「妨害」も、集中力が維持できない原因となることがあります。集中力が続かない原因が自分だけにあるとは限らないのです。
こういった、あなたの作業を妨害して集中力を切らせてしまう原因となる仕事や依頼をできるだけ排除する必要があります。
といっても、企業に勤めている人にとっては、これは至難の業でしょう。
企業人ならば、上司から突然難しい仕事を割り振られることもあるでしょうし、突然同僚から相談をもちかけられることもあるからです。それがたとえあなたが「大切にしたい時間」だったとしても、拒否できないことも多々あります。
しかし完全に断ることはできないにせよ、そういった事象をうまく「管理」することはできるはずです。
より具体的には、あなたなりにタイムゾーンを決めて、その時間だけ相談事や急な連絡などに対応することを周囲に知らせておくのです。
特に経営者の方などは、こういったやり方で自分の集中する時間を何としても確保しようとする人が多いはずです。その時間帯だけは何があっても自分にとって重要な仕事に集中するようにします。
当然、企業人ならばそのやり方にも制約がつくのが普通です。しかし前もって周知させることで、それに添った対応をしてくれる人も多いでしょう。お互いに仕事なのですから、相手の都合も考慮するのは社会人として常識だからです。
特に優秀な人材は、こういったアプローチがお互いの仕事のパフォーマンスにとっても重要だと考えているので、そういう人ほど理解を得やすいと思います。
長期計画も重要
定期的に長期計画を立てることもおすすめです。
その日のタスク計画だけでなく、2週間や1カ月に一度、全体的な仕事の流れを見直してみます。そのうえで、どういった仕事をどういう順で割り振ればより集中して仕事をすることができるか整理してみるのです。
繰り返しますが、仕事の重要度・優先度が曖昧なままだと、脳も混乱してしまいます。その結果、集中すべきときに集中し切れないという弊害が起こります。
特に日頃重要な仕事を任されている人ほど、注意が必要です。作業に忙殺されるうちに、どの仕事にどれぐらいの集中力を割くべきかがわからなくなってしまうからです。
ここでは、あなた自身が導き出した最も集中できる時間帯のデータを大いに活用してください。あなたの仕事の全体像を理解し、長期的にみて重要な仕事をその時間に充てるようにしましょう。
ちなみにこういった長期計画も、邪魔が入りづらい早朝などに行うことをお勧めします。当然、あなたにとってより高いパフォーマンスをもたらす方法があるのならば、それに従うのがよいと思います。
重要なのは、全体を俯瞰して大まかにでも計画を立てることです。これに慣れてくると、突発的な出来事にも対応できるようになり、無駄な時間をとられることが減ってきます。何よりやるべき事が明らかになっているので、無為にだらだらと時間を過ごすことはなくなるでしょう。
あなたが集中力を発揮できる環境を整えつつ、重要な仕事を戦略的にこなせるようになることが重要なのです。書籍などの小手先のテクニックを駆使するよりも、まずはあなた自身が考えた集中力維持のための戦略を大事にしてください。
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